とある読者からの手紙 - 前編 -





当ブログに届いたメールで、大変興味深いやり取りがありましたので、今回はそちらを紹介していきたいと思います。


20歳 HYSさんからのご相談で、ビットコインで2400万円の利益(税払いその他で実益は1200万円ほど)の利益を挙げたとのことです。




とある手紙


初めて連絡させて頂く、HYSと申します。


本日は、小塚さんに投資の手法について伺いたく連絡しました。 私は現在20歳の大学生で、感覚で投資をしています。


暴落に備え何か理論的な方法を身に付けようと思い勉強してきたものの、しっくり来る方法に出会わなかったのですが、小塚さんのブログを読んで初めてストンと落ちる感覚がありました。


そこで小塚さんにお尋ねしたいのはどういった本を読み、どういった経験をされてこういった投資方法を編み出したのかということです。差し障りなければ後学のために教えていただければと思います。



HYSより


思い出話


HYS様



20歳から資産運用、恐らく米国株での運用を考えてらっしゃるのですね。今の日本の現状を考えると運用の知識を身に着けること、大変先見の明があられると思います。


僕の勉強してきた方法に関しては、色々な遍歴がありました。




投資を開始したのはリーマンショック前の大分昔のことですが、当初はグロース株投資や、コモディティ取引(金属など)、不動産(現物)など様々な取引を行ったものでした。


売り買い色々と行いましたが、結局大した利益を挙げられず、特にグロース株投資では大穴を空ける有様でした。何故なのだろう?と考えたときにふと立ち寄った書店で出会ったのが一冊の本、" バフェットの教訓 " なのです。


" 愚か者でも経営出来るビジネスに投資しなさい、何故ならそういう人物がいずれ必ず経営者になるから " "潮が引いた時、初めて誰が裸で泳いでいたかが分かる " 、こういった言葉に頭を殴られるような衝撃を受けたのです。


それからバフェットが必読とした、グレアムの "賢明なる投資家"  "証券分析" 、またバフェットに関する様々な著書を食い入るように読みました。


具体的に言いますと、重要な部分を一通り写本しました。また重要な書籍としては他に、米国で次のバフェットと呼ばれるモニッシュ・パブライの " ダンドー " がお勧めです。




そして、グレアムが記したネットネット銘柄を、実際に日本株で彼の計算式を用いて購入していきました。


ただ現代において、このようなネットネット銘柄はもう殆ど残っていないんですね。それは彼の手法と有効性が広く知られた故なのですが、僕の場合ネットネットを見つけるために、数多くの石を裏返す必要があったのです。ここでは投資するのは200-300銘柄精査してその内一つあるかどうかという所でしょうか。


そして無数に株式と企業の本質的価値の計算を行うことで、次第とその方法にも慣れるようになってきました。年次報告書を読むと、計算せずとも本質価値の計算見込みが直ぐ見て取れるようになってきたのです。


これは音楽家が楽譜を、エンジニアがプログラム言語を読む過程に似ているかも知れません。知識を繰り返しによって技術にすることが重要なのかと思っています。




さてあまり取引が上手ではなかったものの、リーマンやその後の荒れ相場では幸いネットネット銘柄が日本株では多く見られたこともあり、何とかそれなりの利益を挙げつつ市場を生き残ることが出来ました。


私は30代半ば、医師をしているのですが、医師の初任給は25歳くらいから、しかも月手取り20万円程度が5年以上(30歳)まで続き、借金もありましたので、初期投資元本は当時せいぜい100-200万円位と恐らく少ない方ではなかったかと思います。


ただバフェットとグレアムの考えを守ることによってそれなりの利益を出すことが出来ておりますので、重要なことは師と、適切と思われる考えを見つけた後はまずは 愚直にその教えを守るということかと思います。


大変僭越ながら、ここは多くの方が行わないことと思うのですが、これらの教科書に書いてあることを、教科書通りに行うよう努めていることが、私の投資法と言えばそうなのかも知れません。


グレアムのネットネット銘柄を、バフェットの堀= ブランド価値によって守られた銘柄を、パブライのフリーキャッシュフロー価値による銘柄を、そのままの基準で満たすもの以外は購入しない、見つかるまで愚直に何百銘柄でも探し続けるという信念が必要ではないかと思います。


また、この投資法の実践には大変な手間と時間が掛かりますし、バフェットが言うように " バリュー投資は見た瞬間に出来るかどうか分かる " という生来持った気質というものも重要だと思っています。


バリュー投資の性質上、値が下げ続ける(50%位下げることもあります)時も売らずに買い続ける信念、折れぬ心を試されるのですね。資産運用に留まらず全人的な自分自身を試される面があると思うのです。


僕自身は家族には市場平均に連動するETF(VTI, SPYなど)を勧めています。


恐縮ながら率直に言いますと、プロを目指す位に勉強し、かつ克己心がなければ、多くの方では(9割以上)市場平均に劣後するのが投資ですし、下げたときに理論的に買増すということが殆どの方には難しい現実があるからです。


僕の投資はこれらの点から万人にお勧めするものでは無く、ここはよくよく御勘案頂く必要があるように思います。




上記、差し出がましいことを申しました。ただHYS様の質問がお若い内からの切なるもののように思いましたので、私も思う所を率直にお伝えさせて頂きました。失礼もありましたこと、ご容赦下さい。


上記、どうぞ宜しくお願い致します。



小塚 崇史拝


ビットコイン・バブル


小塚様



丁寧かつ詳細な返信ありがとうございます。


小塚様の投資人生に大きな影響を与えた本を教えて下さり感謝します。私の場合は、小塚様と逆に、利益を上げ過ぎてしまった為に危機感を持っています。


前提として自分は学費が免除される特待生として、大学に通っています。


また、卒業後に放送大学に入ることで、奨学金の返済がかなりの間猶予されることと考え、奨学金を「ただで得られる資金」として投資に回しています。


その上で、自分は昨年の1月にビットコインと株式投資を始め、12月になりビットコインの余りの高騰に怖くなり、逃げ出したことで結果的に多大な利益を得ることに繋がってしまいました。


結果的に、ビットコインで昨年1年で約2400万円程(税など考慮し実益1200万円)の利益を得ることが出来てしまった為に、リーマンショックを生き残った小塚様の様な、理性的かつしっかりした数字・理論に基づく分析を見、自分の無知ゆえの蛮勇を反省している次第です。


ただ、理性の面では小塚様の仰った「プロを目指す位に勉強し、かつ克己心がなければ、多くの方では(9割以上)市場平均に劣後するのが投資ですし、下げたときに理論的に買増すということが殆どの方には難しい現実がある」という言葉は理解できるのですが、感情の面では、一回そういった局面になってみなければ、自分のストレス耐性がどれくらいなのかわからないのです。


そのため、小塚様が教えて下さった本を良く咀嚼し、理性を磨きつつ可能な限り損失を抑える投資を行っていきたいと考えています。



重ねて丁寧な返信を頂いたことを感謝します。本当に有難うございました。



HYSより


私が思うこと


さて、なかなかに面白い経歴の質問者様です。


20歳という若さもさることながら、奨学金まで投資資金に注ぎ込むという投資スタイルには脱帽です。これはなかなかに肝が据わった方ですね。


次回はビットコインのくだりを受けての、このやり取りの続きです。乞うご期待下さい。



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