今回は、コンテナリース準大手のCAIインターナショナルについて見ていきます。
この度、私は当銘柄に所有資産の10%を投じました。同社は時価総額4.5億ドル程度、世界6位の規模のコンテナリース会社になります。
こういった産業を聞くと、「いかにもシクリカル(景気循環的)だな…。一旦不況になると、価格変動がもの凄く大きいのではないか?」と思う方も多いのではないでしょうか?
実際、本銘柄は自動車や造船などと同じく、景気循環により業績が大きく左右される業界構造上、とても高いボラティリティを持つ(5割位の価格変動はザラの)まさに景気循環銘柄となります。
ただ、こういった銘柄への投資は景気サイクルと投資タイミングが一致、ないし不況時も企業が耐え抜く体力を備えていれば大きな投資成果を生むことを多く経験します。
またオールドエコノミーかつ、設備投資・負債が大きくなりがちな産業の特性上、その価格も非常に低いレベルに抑えられ、割安に放置されがちな点も利点として挙げられるかと思います(私の本銘柄購入時のバリュエーションはPER 5倍台・PBR 0.7倍台です)。
このようないかにもバリュー好きのする特性と、ちょっと危険な雰囲気を漂わせる本銘柄、興味のある方は、是非とも以下ご一読いただければ幸いです。
コンテナ船
コンテナ
コンテナは船舶・鉄道での物資の大量輸送に欠かせぬ手段として広く用いられています。
かつて貨物船の荷役は港湾労働者が人手で行っていたのですが、1950年代のコンテナの発明、その後のコンテナ規格統一・普及による物流革命(コンテナライゼーション)により船荷・鉄道貨物の積み替えが容易となったことから、現代社会に欠かせない大量物流の輸送が可能となりました。
・ドライ・コンテナ:
一般にイメージされる鉄の箱。
・リーファー(冷蔵)・コンテナ:
生鮮食品や生花用、医薬品・電子部品などの冷蔵輸送用。
・ベンチレーター(通風)・コンテナ
植木や野菜用の内部が換気可能なもの。
・タンク・コンテナ
ガス・化成品・危険物・原酒など液体や気体を輸送。
・カーラック・コンテナ
自動車輸送用。
・ペン・コンテナ
生きた動物を輸送。
・バルク・コンテナ
穀物など粉末・粒状のものを輸送。
一般にイメージする単なる鉄の箱のドライ・コンテナ以外にも上記などの多種多様なコンテナがあり、単なる物流の「ハコ」に留まらない、サプライチェーンの一部を担っているのがこの業界なのです。
コンテナ船
※20フィートコンテナ、Wikipedia TEUより引用。
コンテナの規格で世界標準として用いられているのが20フィートコンテナです(TEU:Twenty-foot Equivalent Unit, 20 × 8 × 8.5フィートのコンテナを指す)。
このコンテナを一挙にどの程度運ぶことが出来るかによって、コンテナ船の規模は2000TEU, 4000TEUなどと表記されます。
コンテナ船はエンジン出力の改善など重工業の進歩により年々巨大化しており、パナマ運河サイズ(新パナマックス:13000TEU)、スエズ運河サイズ(スエズマックス:14000TEU)、マラッカ海峡サイズ(マラッカマックス:18000TEU)にも及ぶ超大型船が次々と就航しています。
湾岸戦争で多国籍軍に輸送された物資が計82000TEU強だったとのことですから、これらのコンテナ船が、いかに多量の物資を輸送可能かが分かると思います。
コンテナ船業界
業界のこれまで
近年、貿易のグローバル化によって、世界貿易量が拡大傾向にあることからコンテナ需要は堅調に推移しています。
上図のように、世界のコンテナ台数は1980年代から平均年7.7%の成長率を記録し、2009年に初めて前年比-3.7%の落ち込みが見られたものの、その後も緩やかな成長が続いています。
特に基幹航路内でも成長しているのがアジア域内航路で、2017年はアジア諸国の5%ほどの経済成長を背景に、北米・欧州航路を上回るコンテナ輸送量増を達成しています。
またコンテナリースは歴史的に、コンテナ市場の4割以上を占めています。これは景気循環が大きな影響を与える物流の構造上、船会社が自前でコンテナ投資を行う借り入れコストは不況時の重荷となりますので、コンテナリース会社がリースにより自社のバランスシートを貸し出すことに、互いの互恵関係があるためです。
更に先述したような多種多様な特殊コンテナが存在し、そのメンテナンスが必要となる都合上、経費削減のためコンテナ管理はリース会社に任せるという選択も合理的となるためです。
漂流するコンテナ業界
さて、コンテナ会社の売上を決める要素は、(1)貨物総量と、(2)貨物の重量当たり単価になります。
前述のように輸送総量自体は増加傾向にあるのですが、もう一つの要素、輸送単価はどう推移しているのでしょう?
コンテナ船の輸送単価の指標には、HARPEX Shipping indexが用いられます。広く用いられるバルチック海運指数が、ばら積み船(バルク船:船倉に石炭・鉱石・穀物を入れ輸送)を対象にしたものである一方、こちらは輸送運賃をコンテナ船8サイズクラス(TEUサイズ毎)に加重平均し、チャーターレートとして算出したものです。
※HARPEX Shipping Index。
ここではリーマンショック以降、未だ大変に安い輸送単価が続いている状況が見て取れますね。
これはリーマンショック以前に好況を反映して大量のコンテナ船が発注され、その発注と完成の間にタイムラグがあることから、バブルが弾けた後に船腹の供給過剰を生じ、その状況が未だ続いていることによります。
また前述のような巨大コンテナ船が次々と就航したことも、より一層の業界環境の悪化を招いたのです。
※三井住友銀行、海運市況動向と戦略の変化より引用。※http://www.smbc.co.jp/hojin/report/investigationlecture/resources/pdf/3_00_CRSDReport026.pdf
同様の状況は海運全般に当てはまっており、タンカー・バルク船・コンテナ船はいずれも供給過剰が持続しています。
ここでは既存船腹の解体(船年15年以上から解体候補)、また輸送需要の経年的増加による需給ギャップ改善=運賃改善を待ちつつの、各社の我慢比べが続いています。
2016年のチャイナショックを大底に需給ギャップは漸く底を抜けつつあるものの、まだ完全にリーマンの傷跡癒えぬのがこの業界なのです。
シケモク・コンテナ
※コンテナ・リース船シェア。
さて、そんな中でも業界6位とやや小ぶりなCAIインターナショナル、会社の規模が価格競争力と業績に直結しがちなコモディティ業界にあって、同業他社間の立ち位置はどうなっているのでしょうか?
※2017年の各社年次報告書より引用。また2018.6.13時点のPBRを使用。
業界1位・3位のTriton (TRTN), Textainer (TGH)はNYSEに上場していますので、上図のように利益率とPBRから見た人気ランキングを考えてみましょう。
ここでは売上規模が大きくなるほどに利益率が高まり、それにより人気が集まるというコモディティの構図が透けてみえます。
では、苦境のコンテナ業界にあって一層弱小の同社、ここまでは安さだけがとりえにも見えますが、肝心の投資妙味はどうなのでしょう?
次回は同社の年次報告書を読み進めつつ、更に考察を深めていきたいと思います。
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