前回はベライゾン・コミュニケーションズが、通信業界特有の問題である高い設備投資費用と過剰な競争状態によって、長年にわたり業績が伸び悩んでいることをお伝えしました。
今回はそのような状態にある同銘柄の、投資における安全域を考察していこうと思います。
予測利回り
私は投資に当たり、メアリー・バフェットの方法を用いて10年後の予測株価を求める手法を取ります。
本銘柄は過去10年のEPS成長率が6%/年でした。現在の成長率が続くとすれば(EPS成長率)^10を、現在のEPS3.21に乗じ、10年後のEPSは5.75となります。
ここに過去10年の最低水準のPER10.58を乗じると、10年後の予測株価は60.82となります。
算出される予測利回りは年2.2%です(配当除く)。同社の過去10年の平均配当率は4.8%ですので、予測リターンは年7%となります。
私の投資判断
この数値はまずまずの水準ではあります。しかし残念ながら、①最低年利回り10%という安全域が保てないこと、②そもそも強いブランド力や高い利益率といった「堀」に保護された企業でないことから、私はベライゾン・コミュニケーションズを現状、投資対象としません。
またコモディティに類する企業に投資する場合は、より厳密に安全域の定義を当てはめなければ、景気後退期に過当競争が重なった場合、元本喪失リスクがつきまとうことになります。そのためコカ・コーラやP&Gなどといったブランド企業よりもより厳格な基準で評価を行うべきでしょう。
特に本銘柄はリーマン・ショック時には赤字を計上していますので、この点は重要です。
従って、この銘柄にもし私が投資する場合は、最低年利回りで言いますと年15%位の安全域を確保しておきたいところですね。
ベライゾン・コミュニケーションズの先行き
しかし、通信事業というものは必ず今後も必要な事業ですし、米国全土をカバーする通信インフラには絶大な設備投資が必要であることから、新規プレーヤーは参入し難く、業界全体が数社に寡占されている事実は、今後も続くでしょう。
こういった環境を考慮すると、激しい競争の中でも、かろうじて事業を継続する位の利益を最低限出しつつ、通信事業各社は今後も推移するだろうとは思いますし、業績面でライバルのAT&Tや、スプリントよりも比較的に安定感のあるベライゾンは生き残る可能性が高いと思います。
従って更に価格が下落し、先述の基準を満たす場合や、ないしグレアムが言ったような割安銘柄(PBR 0.66 - 1.2倍以下)となる場合には、買い場が出現しうると考えております。
高い配当金の罠
高配当、寡占事業モデルが当てはまる本銘柄は一見非常に魅力的に映ります。しかしその事業構造は堅牢とは言い難く、時に赤字を生む高コスト体質は大きな問題です。ウォーレン・バフェットはかつて、「普通の企業を素晴らしい価格で購入するよりも、素晴らしい企業を普通の価格で購入する方が良い」と言いました。
この場合、私もそう思います。
そして私は配当金の水準や、バリュエーション面(PER・PBRなど)で多少劣るとしても、より深い「堀」を持つ企業に投資したいと思うのです。
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