前回はプロクター・アンド・ギャンブルが激しい競争に晒され、ここ10年ほどの売上、純利益、EPSなどが殆ど伸びていないという、同社の苦境をお伝えしました。
※MSNマネーより引用 PGの5年間の株価チャート
さて、そんな中でも同銘柄の株価はV字回復の最中にあるように見えます。市場はPER25倍前後と高い評価を下しているようですが、その判断は正しいのでしょうか。
今回は同銘柄の本質的価値、そして安全域を考察していきます。
私は投資に当たり、メアリー・バフェットの方法を用いて10年後の予測株価を求める手法を取ります。
本銘柄は過去10年のEPS成長率が2.0%でした。現在の成長率が続くとすれば(EPS成長率)^10を現在のEPS 3.69に乗じ、10年後のEPSは4.48となります。これに過去10年の最低水準PER14.23を掛けると、10年後の予測株価は63.7となります。
尚、先日お伝えしたように2017年度はブランド売却による一時利益がありましたのでEPSはそれによる修飾を受けています。その分を除くと2017年のEPSは3.69となり、計算にはそちらを用いています。
算出される最低予測利回りは年-3.7%です(配当除く)。同社の過去11年の平均配当率は年2.9%程ですので、現状の価格ですと予測リターンは年-0.8%となります。
さて株価は、(株価 = EPS × PER)により算出されるため、EPSが殆ど上昇しない同銘柄でその株式の価格を規定しているのは主にPERということになります。言い換えると銘柄に対する期待度が、現状の価格を支えています。
今の高い株価は、2015年頃に比べ、下がり止まり始めた売上高と利益率に対する市場の期待が支えている面が大きいと思います。そして、この期待を裏付ける業績が得られなければ、どこかの時点で株価は調節局面を迎えることとなるのでしょう。
10年続く売上と利益の低迷からは、私は同銘柄からは「堀」は失われつつあるのだろうと現状では判断します。歯ブラシ、紙おむつ、洗剤などの同社のブランドは、例えばたばこやクレジットカードほどには強力な「粘着性」を有していないと考えています。普及が進む小売り業者のプライベートブランドとの競争で、このまま同銘柄はコモディティ化するかも知れませんし、そうでないかも知れません。
私にはその確実な将来は分かりませんので、分からないものには私は投資しないスタンスを取ります。
特に今後脅威と考えられるのは、利上げによる無リスク資産の米国債の利回り上昇です。現在は10年物国債の利回りは2.2%程度ですが、この数値が2.5% → 3.0% → 3.5%と上昇するに従い、ファンダメンタルズが脆弱な銘柄では株価への下落圧力がかかることになります。特に債券の代替としての性質も有する本銘柄のようなディフェンシブ銘柄では、その影響が懸念されます。
世界中に知られる知名度を持ち、元来の財務基盤が強固な本銘柄では、倒産や赤字転落といったリスクは殆どないでしょう。しかし、その「安定性」のために、必要以上の価格を支払うことは高くつく取引になるかも知れない、私はそう思うのです。
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