前回は、下記のアーリーリタイアの問題点を考察しました。
(1) 給与所得が消失し、かつその状態で固定すること。
(2) 円建てで準備した資産は、リタイア後にインフレによって価値を毀損する可能性があること。
(3)リタイアが早いほど、この状態が長く続くため長期に渡り通用する対策が必要なこと。
今回は、これらを満たす解決策を考えていきます。
なお、最初に解決策から言いますと「超長期に渡って利益を生み続ける可能性が高い、海外株式への分散投資」が私の結論ということになります。
「日本に住む」というリスク
単に貯蓄を積み上げるだけでは、高い確率で生じるだろう日本円のインフレに資産を侵食されることとなります。
経済史はインフレとデフレの繰り返しですが、総じて多いのはインフレの状態です。バブル崩壊後、長きに渡り日本はデフレに苦しめられてきましたが、経済史ではこれは特異な状況と言えます。
さて、平成29年度の、日本政府の借入金は865兆円となっています。歳入と歳出は97兆円ですから、その巨大さが分かりますね。
歳出の内、ほとんどを占めるのは圧倒的一位の社会保障費32兆円、次点の国債の返済と金利24兆円です。これは今後も高齢化により、減少する見込みは有りません。
現在は低金利政策により、国債が低金利のため借入金返済も可能ですが、仮に金利が2% → 4% →6%となり、歳出が17兆円増 → 34兆円増 → 51兆円増となれば、歳入が97兆円しかない訳ですから、あっという間に負の複利効果で借入金は膨れ上がるでしょう。
そうなった場合に、大きく膨らんだ借入金を返済する手段はインフレ以外に私には思いつきません。
社会保障費を大胆に50%カット!国民皆保険制度を廃止!などを行いうる政治家が出てくれば話は違うでしょうが、財政規律を保つ政治家が当選し難い民主主義のシステム上、このままの流れが続く可能性が残念ながら高いと思います。
その結果として、マイルドなインフレ(年3-4%位)で済めばよいですが、年10%程度の高度のインフレが生じる可能性も私は十分あると見ています。
そのため、超長期の資産運用を考えるに当たっては、何らかの資産運用でインフレ対策を講じる必要があると思います。
インフレへのプロテクター
インフレの際に、資産を守るためには、資産の相応の割合をリスク資産(株式・不動産)などに投じ、(インフレ率+生活費分)の利回りを得る必要があります。
一般的にインフレヘッジとして有効とされる資産クラスは、株式、不動産、金などとされています。
しかしここで重要なのは、既にアーリーリタイアしてしまっている人には、もう給与所得はありませんし、再就職も恐らく以前と同じ条件では困難という事実です。そのためボラティリティが高い、個別株投資や新興国投資などといったものには大きな投資を行いにくいでしょう。
ほぼ100%、将来の利益が確保できる見込みの商品で無ければ、投資の対象とはし難いと思います。
高確率で利益を見込む投資
40年以上の超長期に渡って生活費を含めた高いリターンを得続けることが出来る商品となると、私は民主主義のシステムそのものと言える、米国市場全体への投資を考えます。
即ち、VTIやSPYなどへの投資が一つの解決策だろうと思います。
過去のデータではS&P500種のリターンは1957-2003年にかけて10.85%/年であったと報告されています。そしてこのリターンは金や国債などの資産クラスのリターンを圧倒的に凌駕するものでした。
過去の業績が未来を保証する訳ではありませんが、先進国の中でも比較的に高齢化の進行が遅いという人口動態上の利点、世界第一のシェアによる「堀」に囲まれたIT・重工業・小売などのグローバル企業群、政治が関与しない自由市場という国家としてのファンダメンタルズは抜群であり、少なくとも20年程度は米国の国家としての優位性は揺らがないだろうと考えます。
日本の株式や不動産への投資は、円の価値が著しく毀損された場合にその価値がどのように変化するか、私には判断が付きかねます。株式は、超長期で見れば生き残った企業においてはインフレヘッジが可能ということが市場全体では過去の結果から報告されていますが、恐らくそれまでに長い年月と忍耐を必要とするでしょう。また不動産の場合は、急な病気などで現金が必要となった場合、換金性が非常に低いという難点があり、私は投資対象としません。
米国以外の株式投資も考慮に挙がります。しかし投資においては(1)政治の市場への介入(中国の市場介入のような状態)が無いこと、(2)国際政治や紛争によるその国の長期停滞リスクなど(現在のロシアや、戦後のドイツ・日本などのような状態)、それによる10-20年程度の「塩漬けリスク」が無いことも、よく考慮する必要があるでしょうね。
さて、それでは次回は実際にアーリーリタイアに必要な資産総額を考えていきましょう。
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