適切なキャッシュ・債券の保有率に関して (3) 偉人達のポートフォリオ



投資の偉人たちはキャッシュ・債券の保有にどのようなスタンスをとっていたのでしょうか。ちょっと過去を振り返ってみてみることにしましょう。


ベンジャミン・グレアムは資産の半分を優良債券、半分を株式として保有し、さらにその比率は個々人の資産運用に対する考えによって変更されるべきとのスタンスをとっていました。これは彼が大恐慌により破産しかけた経験を持つため、彼の投資スタンスが資産の元本保全を第一としていたことによるのでしょう。また、債券の金利水準が現在よりも相当に高かったという当時の市況もあります。


しかし、現在のような米国債の低金利の時代に資産の半分を米国債で保有するということは、安全ではあるものの相応の利回りの低下を招いてしまいます。


短中期的にはインフレ率さえ上回れない可能性もありますし、現代のポートフォリオ構築にはあまり役立たない印象を受けます。




それでは、現代に生きるウォーレン・バフェットのポートフォリオはどうでしょうか。

※ブログ 節約発投資行きより


大きく見て、(1)2006年から2007年のリーマンショックにかけて株式や子会社の購入を控え、現金・債券の比率を維持しています。また、(2)2000年代前半に比べて近年、債券の保有率が次第と下がっています。




(2)を行った理由として、上図のように、政策金利が高い間、つまり債券の利回りが高い間はバフェットは資産を債券として保有し、金利が低下したら売却に転じているためと考えます。また、これにより利下げ局面(景気後退局面)では債券売却益も得ることになります。


(1)リーマンショック前に株式購入をやめたのは何故でしょうか。


先日お伝えしたように、PERの逆数(1/PER)は株式の期待利回りと表現されます。リーマンショック時にはS&P 500の平均PERは25.6でしたので、株式期待利回り4%<FFレート5.25%となり、理論的に、これらのバブル崩壊前は、株式利回り<債券利回りとなった時期です。実際、この時期はどの銘柄も高騰し、バリュー投資家としては、買いたいと思える銘柄は見当たらない時期でした。


バフェットはこういった市況を見て、リーマンショック前の2006年からリスク資産の積み増しを止め、無リスク資産の保全に努めていたのでしょう。


更に踏み込んで、株式の売却に踏み切らなかったのは、(1)長期的には上昇を続けるのが米国市場ですから、もし当時これらの高騰した相場がバブルではなく真の長期強気相場であった場合は、ただ上昇を続ける市場を黙って見届けることになるリスクがあること。(2)また株式を売却した場合は税金支払いが生じ、それによる投資元本の減少というリスクがあることが原因ではないかと考えます。


結論です。


(1)株式利回り<債券利回りが推測されるとき、かつ十分債券利回りが高い場合は債券保有が選択肢となる。



(2)株式利回り<債券利回りが予想されるときは株式を高比率に買い増すことは行わない。




次回は、実際に今、どのようなキャッシュ・債券(短期債ないし中期債)を含めたポートフォリオを組むか考察していきたいと思います。





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