今回はヘインズ・ブランズの2017年度 Q4決算を見ていきます。
今回の決算は、前回までと様相が異なるものでした。
決算内容
※ヘインズ・ブランズ 2017 Q4決算、同社IRより引用。
前四半期までは、売上の伸び悩みがみられ株価を抑える最大の原因でしたが、今回は前年比4.4%増と売上増を達成しています。
しかし今回SGA費(販売費および一般管理費)の増大、それによる顕著な営業利益の低下を見ています。
では部門別に見ていきましょう。
前回までは、本企業の主力たる米国内のインナーウェア部門(下着などの販売)の低迷が目を引き、これはAmazonによる百貨店・ショッピングモールなどの従来型小売店舗の低迷により多くの不良在庫が生じたことが主な原因でした。
ですが、今回インナーウェアの売上はようやく売上増を達成しています。これは他の百貨店など小売り業各種の決算を見ても、企業によっては業績に底打ち感が見られ始めてきたことと一致しますね。
ですが問題は、前回まで売上減ながら営業増を継続してきたインナーウェア部門が、今期は営業利益減に沈んでいることです。
この数値は深刻です。
というのは、伸びる売上に比しての利益減となると、その背景には恐らくAmazonと小売店の競合による値下げ圧力や、中間コスト増加にヘインズが晒され始め、それに抵抗し得ていない可能性があると思われるからです。
この結果を受けて、2月8日の市場でヘインズ・ブランズは前日比 - 10.88%安の19.57ドルを付けています。
今回の売買
老舗の下着企業としてブランド価値を有すると思われる本企業は、小売不況の中でもブランド価値を毀損せず(=値下げを行わず)、売り手が従来型店舗からEコマースに移行しても、消耗品として延々と再使用されるとの前提で、私はこの決算前まで本質価値をおよそ25ドル前後と見積もってきました。
ですが、残念ながら投資の前提が変わった可能性がまずまずある状況で、当銘柄に投資をこれ以上続ける根拠は、私の場合乏しい印象です。
従って、2月8日の決算発表直後をもって、私は売却単価20ドルで本銘柄の全株式を売却し損失を確定させました。
私の考え
今回の失敗の原因は、残念ながら私のブランド価値への見積もりの甘さにあったと思います。
ヘインズは自社で従来型店舗をほとんど保有しておらず、小売り不況の影響は一過性で済むだろうと私は目算していましたが、Amazonの影響力と価格への訴求性は強力でした。更に恐らくミレニアル世代を中心とした米国アパレル市場の嗜好の変化も、今回の決算に影響している可能性があると思います。
アパレルへの投資の難しさを手痛く感じます。そして今後はこのトレンドに気をつけてかかる必要があると、自分の甘さを恥じます。
売り買いの推移
※ヘインズブランズの売却時までの長期チャート。青丸が私の購入タイミング。赤線が平均購入価格。
なお平均購入単価が21.03ドル、売却単価が20ドルですので、額面の損失は5%程度ですが、保有期間内の配当が2%強あることから、1年弱の保有で実際の損失は約2.5%(損益通算を考慮するとおよそ2%)といったところです。
ここでの一つの救いは、事前の十分な安全域を保つ戦略が、平均購入単価を低くおさえ、損失を和らげるクッションとなったことです。
私の売り買い
当ブログの損失確定は3.5年ぶりくらいになります。昔に比べると大分ポカをやらかすことは減りましたが、やはり損失は手痛いものです。
ちなみに今回は2月8日の荒れ相場の真っ最中に全株式を一括で売り払っており、弱気相場中の売却により余計なプレミアムを払っている可能性はあるのですが、撤退の方法にも人によりさまざまなご意見があろうかと思います。
もしかすると相場の改善や、また今後の決算の経過次第では本企業のブランド価値が再確認され、株価が上昇する局面もあるかも知れません。
ですが私の投資は本質価値より安く買い、高ければ売るというところに立脚しておりますので、見立て違いにより本質価値と異なる値を付けた可能性の高い銘柄は速やかに売却というのが、私の方針です。
かつて投資の目論見が外れた場合のことを聞かれたジョージ・ソロスが言いました。
「真っ直ぐに、後ろを向いて逃げるのさ」と。
私もこの場合はそういう流儀です。
また集中投資の危険性に関しても、今回読者の方からコメントを頂きました。
確かに残念ながら株式において見立て違いを避けることは不可能ですし、分散はそれを軽減します。それにちょくちょくこのような間違いを私はやらかすんですよね。
ですが、私が集中投資を行う銘柄は安全域によって下方リスクは限定的ながら、伸び幅は非対称的に大きいと思われる銘柄に絞っています。
もちろん見たて違いも時にありますので、今回は残念ながら損益イーブンの結果に終わりましたが、いわば表が出る確率が高いコイン、かつ表が出た場合は2倍以上のリターンとなるような賭けを、3回連続でミスする可能性がどれくらいあるだろうか? というような数学的な理由が集中投資の根拠です。
ここも人によって様々なご意見があろうかと思いますが、私の場合このように考えます。また同じ位の予測リターンの銘柄が複数存在するならば、私も分散投資が望ましいとは思うのですが、この高値相場でバリューにとっては思うような銘柄選択が出来ず、リターンの安定性を不本意に圧迫していることも、ご斟酌頂けましたら幸いです。
最後に
残念ながら、ヘインズの後退により年初から2月8日までの当ブログのリターンは、S&P 500に-0.6%ほど劣後しています。
下げ相場で強いはずのバリュー投資家としては、お恥ずかしい限りです。
ですが私は思うのです。思い通りにいかないからこそ、相場は楽しいのだと。そしてこんな思わぬトラブルを楽しんでいけたらと、そう思っています。
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