本質的価値
本質的価値の定義
本質的価値の求め方には(1)揺らがぬ消費独占力を持つフランチャイジーへのバフェットの手法、(2)清算価値を基にするグレアムの手法があります。
本銘柄の場合、(1)を満たすほどの消費独占力は元来持たない企業と思います。
また(2)の正味流動資産から清算価値を求める手法では、本銘柄の場合はバランスシートから計算してみると清算価値 = ちょうど0程度となり、十分な安全域は取れません(計算の詳細は記事が長くなりすぎるため今回は割愛します、計算法の例としてはエクソン・モービルの投資判断の項、或いはグレアムの著書 "賢明なる投資家" を参照下さい)。
しかし、グレアムの方法はあくまでも固定資産や企業が保有する現金などのみから企業価値を求める方法であり、世界中に知られるフォッシルのブランド力は全く考慮されていませんね。同じブランドを構築するためには、長年の莫大な宣伝費や研究開発費用が必要となりますので、こういったブランド力をある程度有する企業ではブランド価値も含めた本質的価値の算出が必要です。
ここは3番目の方法、マンガーの言った「企業の価値はその企業の残余期間に取り出せる現金の量である」という方法を考えていきます。
堅牢なキャッシュフロー
本銘柄の最も大きな問題は直近1年間の赤字転落です。まずは同銘柄を考えるうえで重要なポイントになる、この赤字の詳細を見ていきます。
※縦軸の単位は100万ドル。
上図はここ2年間の四半期毎の業績です。売上高及び粗利益率の低下、後者からは値下げの影響が見られますね。また営業利益率・純利益率の低迷が目を引き、特に2017年Q2は大赤字を計上しています。
これは先日もお伝えしたように、同四半期で4億700万ドルの巨額ののれん代減損を行ったためです。
のれん代減損は会計のバランスシート上の問題であり、実際に企業に赤字が生じたわけではありませんから、これを除して考えるとどうなるのでしょうか。
※縦軸の単位は100万ドル。
純粋な現金の出入りを表すキャッシュフローを見ていきましょう。のれん償却費や減価償却費など実際の現金の動きを伴わない数値はここに反映されませんので、実際の企業の現金の増減がここでは良く分かります。
何と! 先程まで大赤字を計上していたように見えた同銘柄ですが、キャッシュフローではここ10年赤字がないですね!
純粋な現金の出入りを表すキャッシュフローを見ていきましょう。のれん償却費や減価償却費など実際の現金の動きを伴わない数値はここに反映されませんので、実際の企業の現金の増減がここでは良く分かります。
何と! 先程まで大赤字を計上していたように見えた同銘柄ですが、キャッシュフローではここ10年赤字がないですね!
つまり、同銘柄の赤字は会計上の理由が原因で実際の赤字にはまだ至っていません。先の図では純利益の項目で、2017年第三四半期TTMは通年で3億4900万ドルの赤字を計上していましたが、のれん償却の4億700万ドルを考慮すると、通年の赤字を計上した既往はこの10年ないことになります。
そして上図では2016年を底として、2017年度は営業キャッシュフロー・フリーキャッシュフローとも改善ないし横ばい傾向になっていますね。
そして上図では2016年を底として、2017年度は営業キャッシュフロー・フリーキャッシュフローとも改善ないし横ばい傾向になっていますね。
本質的価値の計算
それでは本質的価値を計算しましょう。
先程お伝えしたように、本銘柄では流動資産+固定資産-負債=ほぼ0でした。そのため本銘柄の本質的価値は、今後生み出すキャッシュフローに等しいと考えられます。
仮に現状のフリーキャッシュフロー1.82億ドル/年が今後続くとします。現在フリーキャッシュフローの増悪は止まっていますが、それでもなお今後、毎年キャッシュフローが10%ずつ減じるという最悪の仮定で考えると、5年間で企業が生むキャッシュは6.71億ドルです。
現在のフォッシルの時価総額が3.24億ドルですから、安全域は100%を超えて確保できる計算ですね。
これが更に毎年20%ずつキャシュフローが減じる仮定でも5年間で4.89億ドルを生む計算で、安全域はなお確保出来るのです。
私の考え
リスクシナリオ
従って3億ドルの価格を払えば、5年で7億ドル超のキャッシュを生む企業が手に入る訳ですから、「50セントで買える1ドル紙幣」というバリュー投資に適う購入対象と考えます。
さて、フォッシルの今後のシナリオとしては、以下を考えます。
(1)小売市況の改善とともに業績はV字反転する。
(2)小売市況は改善するもウェアラブル市場は泥沼化し、どの企業も辛うじて生き残る位の業績で推移する。
(3)稼ぎ頭のファッションウォッチ市場がウェアラブルに圧迫されて壊滅し、ウェアラブル市場でも全く利益を挙げられず倒産の憂き目に至る。
小売不況に底打感が見られ始め、小売不況の最中でもなお通年で赤字のキャッシュフローを出していなかった業績からは、(1):(2):(3) = 4:4:2位の可能性となるかなと推測しています(これでも保守的な推測かと考えます)。
(1)(2)のシナリオであればPBR 0.5倍というバリュエーションからは投資利益を生む可能性が高いと思いますので、「コインの表が出れば勝ち、裏が出ても損失が少ない」賭けになるかと思いますし、更に言うとこの場合、コインの表が出る確率の方がどうやら高そうです。
分散投資
しかし少しでも投資資本全損のリスクがあることに変わりはありません。こういった投資では分散投資が必要かと思いますし、私の場合、本四半期では同銘柄に資産の7%(250万円ほど)の投資を行いました。
個々の銘柄では確実性は十分ではありませんが、こういった銘柄は複数保有を前提することで、総じてリターンを生む可能性を期待する投資です。
ほぼ表が出るコインで10回コイントスを行う場合のリターンを考える、そういった投資をこのような銘柄では行いたいと思いますし、高値相場の現状にあってはよくよく財務諸表の読み込みを行いつつ今後の投資も続けていきたい、そう思っています。
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